【外郎売全文】ふりがな・現代語訳とプロ直伝の滑舌練習法
声優養成所やアナウンススクールの門を叩いた者が、例外なく最初に手渡される伝統のテキストが、歌舞伎十八番の一つ『外郎売(ういろううり)』です。江戸時代から続く流麗な言い立て(口上)には、日本語のあらゆる母音・子音の調音点、腹式呼吸のリズム、そして表現力の基礎が凝縮されています。
しかし、ネット上で見かけるテキストにはルビの表記揺れや意味の省略が多く、「ただ早口で暗唱するだけの作業」に陥って挫折するケースも少なくありません。本稿では、正確なふりがなと段落ごとの現代語訳を備えた『外郎売』の全文を完全収録するとともに、第一線で活躍するプロフェッショナルの現場知見に基づいた実践的な発声・滑舌トレーニング法を徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:歌舞伎十八番『外郎売』の全段落を正確なふりがな・現代語訳・背景解説付きで網羅。
- 要点2:声優・アナウンサー研修で300年以上愛用される理由は、五十音の調音器官を極限まで鍛え上げる音声学的構造にある。
- 要点3:「早口で読む」のはNG。スピードよりも母音の響き・子音の立ち上がり・情景描写を意識することで劇的な上達を実感できる。
【完全版】歌舞伎十八番『外郎売』全文(ふりがな・現代語訳・解説付き)
二代目市川團十郎が享保三年(1718年)に初演した『外郎売』は、早口言葉とリズミカルな啖呵(たんか)売りの技術を融合させた不朽の名作です。ここでは、日々の発声練習でそのまま音読できるよう、歴史的仮名遣いを現代の読みやすさに整えたふりがなと、段落ごとの詳細な現代語訳を完全掲載します。
第1段:名乗りと道中(冒頭のセリフ)
【原文・ふりがな】
拙者(せっしゃ)親方(おやかた)と申(もう)すは、お立合(たちあい)の中(うち)に御存知(ごぞんじ)のお方もござりましょうが、お江戸(えど)を立(た)って二十里(にじゅうり)上方(かみがた)、相州(そうしゅう)小田原(おだわら)一色町(いっしきまち)をお立(た)ち過(す)ぎなされて、円蔵寺(えんぞうじ)を左(ひだり)に見(み)下(おろ)し、道(みち)なりに行(ゆ)けば久野(くの)の橋(はし)、山道(やまみち)を登(のぼ)り降(くだ)り、箱根(はこね)八里(はちり)を跨(また)ぎ越(こ)して、相州(そうしゅう)小田原(おだわら)一色町(いっしきまち)へお出(い)でなされ。
一色町(いっしきまち)を通り過(す)ぎて、小田原(おだわら)の唐天守(からてんしゅ)を東(ひがし)へ打(う)ち見(み)て、大久保(おおくぼ)の宿(しゅく)を御立(おたち)、東海道(とうかいどう)を下(くだ)り坂(ざか)、大磯(おおいそ)・小磯(こいそ)の宿(しゅく)を過(す)ぎ、戸塚(とつか)を離(はな)れて品川(しながわ)へ至(いた)る。
【現代語訳】
私どもの親方と申しますのは、ここにお集まりの皆様の中にもご存じの方がいらっしゃるかもしれませんが、江戸を出発して二十里(約80km)ほど上方(関西方面)へ向かった相模国小田原の一色町を通り過ぎ、円蔵寺を左手に見下ろしながら道なりに進んで久野の橋を渡り、山道を上り下りして箱根八里の険しい峠を越えた先の小田原一色町へお越しください。一色町を通り過ぎ、小田原城の天守閣を東に眺め、大久保の宿場を立って東海道の下り坂を進み、大磯・小磯の宿場を通り、戸塚を過ぎて品川までやってまいりました。
第2段:薬の由来と「透頂香」の拝領
【原文・ふりがな】
これよりはお馴染(なじ)みの、薬(くすり)の名高(なだか)き外郎(ういろう)、薬(くすり)の言(い)われを申(もう)し上(あ)げ奉(たてまつ)らん。
そもそもこの薬(くすり)は、我(わ)が朝(ちょう)の始祖(しそ)、神農(しんのう)の直伝(じきでん)にして、異国(いこく)より伝来(でんらい)せし霊薬(れいやく)なり。
元来(がんらい)、我(わ)が祖先(そせん)・外郎(ういろう)宇野円斎(うのえんさい)が、大明国(だいみんこく)の主(あるじ)、洪武帝(こうぶてい)の世(よ)に、文武(ぶんぶ)の徳(とく)を顕(あらわ)し、この妙薬(みょうやく)を賜(たまわ)りてより、代々(だいだい)家伝(かでん)としてその秘法(ひほう)を伝(つた)う。
帝(みかど)の都(みやこ)に上(のぼ)り、天子(てんし)に拝謁(はいえつ)し奉(たてまつ)れば、冠(かんむり)の隙(すき)より光(ひかり)を放(はな)ち、帝(みかど)大(おお)いに感(かん)じ給(たま)ひて、「透頂香(とうちんこう)」という名(な)を賜(たまわ)る。
即(すなわ)ち、頂(いただき)を透(す)かす香(かお)りと書(か)きて、透頂香(とうちんこう)と申(もう)す。ひらがなにて「ういろう」と名付(なづ)けたるは、我(わ)が祖先(そせん)の官位(かんい)なり。
【現代語訳】
これよりは皆様お馴染みの、名高い妙薬「外郎」の由来を申し上げましょう。そもそもこの薬は、医薬の祖である神農から直接伝えられ、外国より渡来した奇跡の霊薬でございます。我が祖先である外郎宇野円斎が、明国の皇帝・洪武帝の時代に文武両道に優れた功績を残してこの薬を授かって以来、代々秘伝として製法を守り継いでまいりました。日本の朝廷に参上し天皇に謁見した際、冠の隙間から芳しい香りの光を放ったため、帝は大変感動され「透頂香(頭のてっぺんまで突き抜ける香り)」という名を授けてくださいました。ひらがなで「ういろう」と呼ぶのは、我が祖先が朝廷から賜った官職名(礼部員外郎)に由来するものでございます。
第3段:偽物への警告と元祖の誇り
【原文・ふりがな】
昨今(さっこん)、諸国(しょこく)津々浦々(つつうらうら)、我(わ)が薬(くすり)の看板(かんばん)を偽(いつわ)り、外郎売(ういろううり)と号(ごう)する偽物輩(にせものばら)が出没(しゅつぼつ)すと雖(いえど)も、元祖(がんそ)本家(ほんけ)は相州(そうしゅう)小田原(おだわら)の一色町(いっしきまち)、円蔵寺(えんぞうじ)の隣(となり)、梅(うめ)が枝(え)の屋敷(やしき)、八馬(はちま)の薬舗(やくほ)を本舗(ほんぽ)と心得(こころえ)たまえ。
【現代語訳】
近頃、全国津々浦々で我が家の看板を騙り、「外郎売」と名乗る偽者が横行しておりますが、本物の元祖は相模国小田原の一色町、円蔵寺の隣にある梅の枝の屋敷、八馬の薬舗こそが本拠地であるとお見知りおきください。
第4段:驚くべき薬効と弁舌の冴え
【原文・ふりがな】
まずこの薬(くすり)の効能(こうのう)を申(もう)し上(あ)げ奉(たてまつ)らん。
頭痛(ずつう)・眩暈(めまい)・胸(むね)のつかえ、風邪(ふうじゃ)・霍乱(かくらん)・食傷(しょくしょう)・中(あた)ること、腹痛(ふくつう)・霍乱(かくらん)・脚気(かっけ)の類(たぐい)、一切(いっさい)の諸病(しょびょう)に奇異(きい)の霊験(れいげん)あり。
取(と)り分(わ)け、胃腸(いちょう)を温(あたた)め、気力(きりょく)を増(ま)し、痰(たん)を切(き)り、喉(のど)の通(とお)りを良(よ)くするに妙(たえ)なり。
只今(ただいま)はこのように弁舌(べんぜつ)さわやかに、立(た)て板(いた)に水(みず)を流(なが)すが如(ごと)く申(もう)し立(た)て候(そうろう)も、ひとえにこの薬(くすり)の奇特(きどく)にあらずや。
もし疑(うたが)わしく思(おぼ)し召(め)さば、まず一粒(ひとつぶ)召(め)し上(あ)がってみなされ。
舌(した)の上(うえ)に載(の)せ、喉(のど)へと下(くだ)せば、たちまち涼風(りょうふう)肚(はら)の中(なか)に生(しょう)じ、胸(むね)の霧雲(きりくも)晴(は)れ渡(わた)り、心気(しんき)さわやか、弁舌(べんぜつ)流暢(りゅうちょう)、言(こと)の葉(は)の滞(とどこお)りなきこと、水車(みずぐるま)の巡(めぐ)るが如(ごと)し。
【現代語訳】
まずこの薬の効き目をご説明いたしましょう。頭痛、めまい、胸のつかえ、風邪、急な吐き気や下痢、食あたり、中毒、腹痛、脚気など、あらゆる病気に対して驚くべき効き目がございます。とりわけ胃腸を温めて気力を高め、痰を切って喉の通りを劇的に良くする効果は格別です。今こうして私が流れるように爽やかに立て板に水のごとく喋り立てておりますのも、すべてはこの薬の霊験によるものに他なりません。もし疑わしいとお思いなら、まずは一粒お試しください。舌の上に乗せて飲み下せば、たちまち腹の中に涼やかな風が吹き抜け、胸の曇りが晴れ渡り、気分爽快となって言葉が淀みなく水車のように回り始めます。
第5段:怒濤の早口言葉(滑舌練習の最難関パート)
【原文・ふりがな】
さて、この薬(くすり)を服(ふく)したる上(うえ)は、舌(した)の廻(まわ)ること、如意自在(にょいじざい)。
さだだ・さだだ・さだだ・さだだ、あかさたな・はまやらわ・おこそとの・ほもよろを。
一(ひと)つへぎへぎに・へぎほしはじかみ、盆(ぼん)まめ・盆米(ぼんごめ)・盆(ぼん)ごぼう、摘立(つみた)て・摘豆(つみまめ)・つみ山椒(ざんしょう)。
貴嶺(きれ)の木(き)の幹(みき)、お茶立(ちゃた)ちょ・茶立(ちゃた)ちょ・ちゃっと立(た)ちょ・茶立(ちゃた)ちょ、青竹茶筅(あおだけちゃせん)でお茶(ちゃ)ちゃっと立(た)ちゃ。
泥鰌(どじょう)にょろにょろ・三(み)にょろにょろ、合(あ)わせてにょろにょろ・六(む)にょろにょろ。
一筋(ひとすじ)縄(なわ)には括(くく)られぬ、長(なが)の柄(え)の長柄杓(ながびしゃく)。
八枚屏風(はちまいびょうぶ)が・骨(ほね)屏風(びょうぶ)、裏(うら)表(おもて)貼(は)り替(か)え・八枚屏風(はちまいびょうぶ)。
麦(むぎ)ごみ・麦(むぎ)ごみ・三(み)麦(むぎ)ごみ、合(あ)わせて麦(むぎ)ごみ・六(む)麦(むぎ)ごみ。
あの長押(なげし)の長薙刀(ながなぎなた)は、誰(た)が長薙刀(ながなぎなた)ぞ。
向(む)こうの胡麻殻(ごまがら)は、荏(え)の胡麻殻(ごまがら)か、真(ま)胡麻殻(ごまがら)か、あれこそ本(ほん)の真(ま)胡麻殻(ごまがら)。
がらぴい・がらぴい・風車(かざぐるま)。
おきゃがれ・こぼし、おきゃがれ・法師(ほうし)、昨夜(ゆうべ)もこぼして・又(また)こぼした。
たあぷぽ・たあぷぽ・ちりから・ちりから、つっぷり・つっぷり・つぶり・つぶり。
砂利(じゃり)山(やま)の・じゃら蓴菜(じゅんさい)、釣鐘(つりがね)の・じゃらんじゃらん。
歌(うた)うまい奴(やつ)が・歌(うた)うたいに来(き)て、歌(うた)うたえと申(もう)すが、歌(うた)うたいが・歌(うた)うたうだけ・歌(うた)うたえれば・歌(うた)うたうが、歌(うた)うたいほど・歌(うた)うまくなければ・歌(うた)うたい分(ぶん)だけ・歌(うた)うたわぬ。
蛙(かわず)ひょこひょこ・三(み)ひょこひょこ、合(あ)わせてひょこひょこ・六(む)ひょこひょこ。
親(おや)も嘉兵衛(かへえ)・子(こ)も嘉兵衛(かへえ)、親(おや)嘉兵衛(かへえ)・子(こ)嘉兵衛(かへえ)、子(こ)嘉兵衛(かへえ)・親(おや)嘉兵衛(かへえ)。
古栗(ふるぐり)の木(き)の・古切口(ふるきりくち)。
雨合羽(あまがっぱ)か・番合羽(ばんがっぱ)か、貴様(きさま)の脚絆(きゃはん)も・革脚絆(かわぎゃはん)、我等(われら)が脚絆(きゃはん)も・革脚絆(かわぎゃはん)。
尻取(しりと)り・引(ひ)っ括(くく)り・摺子(すりこ)木(ぎ)原(ばら)の・木(き)の端(はし)、打(う)ち寄(よ)せ・打(う)ち寄(よ)せ・摺鉢(すりばち)落(お)とし。
諸君(しょくん)見(み)たまえ・聞(き)きたまえ。
武具(ぶぐ)・馬具(ばぐ)・武具(ぶぐ)・馬具(ばぐ)・三(み)武具(ぶぐ)馬具(ばぐ)、合(あ)わせて武具(ぶぐ)馬具(ばぐ)・六(む)武具(ぶぐ)馬具(ばぐ)。
市川(いちかわ)三升(みます)の・升合(ますあ)い・升合(ますあ)い・しめ升合(ますあ)い。
田中(たなか)の棚(たな)に・小棚(こだな)のせて、小棚(こだな)に・小鍋(こなべ)のせて、小鍋(こなべ)落(お)ちて・こなべこなべ。
虎(とら)を捕(と)らえし・鳥刺(とりさ)しが、竹(たけ)束(たば)五(ご)百本(ひゃっぽん)取(と)り捨(す)てて、飛(と)び込(こ)む竹(たけ)藪(やぶ)の中(なか)。
菊(きく)・栗(くり)・菊(きく)・栗(くり)・三(み)菊(きく)栗(くり)、合(あ)わせて菊(きく)栗(くり)・六(む)菊(きく)栗(くり)。
たごの木(き)・竹(たけ)の木(き)・たご竹(たけ)の木(き)、竹(たけ)の木(き)・たごの木(き)・竹(たけ)たごの木(き)。
【現代語訳】
さて、この薬を飲んだからには、舌の回転は思いのまま自由自在です。(※ここから様々な難解な言いまわし、道具や食材の名、早口言葉、畳み掛ける言葉遊びが次々と飛び出し、薬を飲むことで口が極めて滑らかに動く様子を演じきります)。
第6段:結び(口上の締めくくり)
【原文・ふりがな】
言(い)おうは愚(おろ)か、呑(の)み込(こ)んでみやれ。
宣(のたま)うは・口(くち)の・養(やしな)い、言(い)わぬは・薬(くすり)の・毒(どく)となる。
いやはや・どうも・言い立て申(もう)すも・息(いき)が切(き)れる。
小田原(おだわら)名物(めいぶつ)の・外郎(ういろう)、透頂香(とうちんこう)は・いらっしゃりませぬか。
【現代語訳】
あれこれ言葉で説明するのは愚かなこと、まずは実際に一粒飲み込んでみてください。声を出すことは口の健康維持となり、黙っているのは薬の効能を無駄にして体に毒でございます。いやはやどうも、これほど長い口上を申し上げるとさすがに息が切れるほどです。小田原名物の外郎、透頂香をお買い求めになる方はいらっしゃいませんか!

なぜ『外郎売』は声優養成所やアナウンサー研修の必須教材なのか?
日本国内のほぼすべての声優養成所(日ナレ、青二塾、マウスプロモーション付属養成所など)や、民放キー局・NHKのアナウンサー新人研修において、『外郎売』は基礎訓練カリキュラムの筆頭に位置づけられています。単なる伝統芸能の踏襲ではなく、現代の音声生理学・調音音声学の観点からも極めて合理的な理由が存在します。
第一に、調音器官(舌・口唇・軟口蓋・下顎)の全稼働です。例えば「へぎほしはじかみ」では唇音(ハ行・バ行)と舌音(タ行・サ行)の高速切り替えが求められ、「武具馬具(ぶぐばぐ)」では両唇破裂音[b]と軟口蓋破裂音[g]の連続打鍵が行われます。現代日本語の日常会話では使われにくい舌の奥(舌根部)や唇の筋肉を隅々まで動かさなければ、明瞭に発音できない構造になっているのです。
第二に、無意識の腹式呼吸と息のコントロール能力の定着です。『外郎売』の早口パートは1文が長く、息継ぎ(ブレスポイント)の設計を誤ると後半で息が枯渇します。「息を吸うために止まる」のではなく、「言葉のリズムの中で瞬時に横隔膜を下げて必要十分な空気を補給する」というプロ必須のスキルが自然と身につきます。
【徹底比較】主要な発声・滑舌トレーニング教材と『外郎売』のポジショニング
発声や滑舌を鍛えるための定番テキストはいくつか存在しますが、それぞれ目的と鍛えられる要素が異なります。自身のレベルや目的に合わせて適切に使い分けることが肝要です。
| 教材名・テキスト | 難易度・所要時間目安 | 主な訓練要素・特徴 | 編集部の見解・おすすめ対象 |
|---|---|---|---|
| 歌舞伎十八番『外郎売』 | 高(上級) ノーマル読み:約4〜5分 高速読み:約2分30秒 | 母音子音の全網羅、ブレスコントロール、啖呵売りの演技力・リズム感 | 声優・アナウンサー・舞台俳優志望者、プレゼン力を底上げしたいプロ向け |
| 北原白秋『五十音』 (あめんぼ赤いな) | 低〜中(初級) 標準読み:約1分30秒 | ア行からワ行までの母音の口形、子音の正確なアタック、リズムの均一化 | 発声初心者、ウォーミングアップ、基礎的な口の開き方を身につけたい層 |
| 夏目漱石『草枕』冒頭 (山路を登りながら) | 中(中級) 標準読み:約1分 | 文語調の格調高い鼻濁音・無声化、情緒的なトーン、長文読解と間(ま)の取り方 | ナレーター、朗読検定受験者、知的な語り口を習得したいビジネス層 |
| ニュース原稿・気象情報 | 中〜高(実戦) 標準読み:1項目40秒〜1分 | 正確なアクセント辞典準拠、数字や固有名詞の処理、フラットな情報伝達 | 報道志望者、司会業、明瞭かつ正確なファクト伝達が求められる業務 |

【実態検証】養成所現場とプロフェッショナルが明かす「正しい練習ステップ」
養成所の現場で講師陣が口を揃えて指摘するのが、「最初からYouTube等の高速朗読音声を真似て、口先だけで走ってしまう受講生の多さ」です。これは滑舌を改善するどころか、調音点の歪みや顎の緊張という悪い癖を定着させる原因になります。プロが実践する王道の3ステップを守ることが最短の近道です。
ステップ1:PDF印刷したテキストに「ブレス記号」と「アクセント」を書き込む
まずは紙のテキスト(PDFをA4サイズで印刷したもの)を用意します。画面越しではなく紙を使うことで、視線の移動や姿勢が固定され、発声に集中できます。全文を読みながら、自分が息を吸うポイント(Vマーク)と、詰まりやすい難所に赤ペンで印を入れます。
ステップ2:メトロノームを用いた「BPM60」での超スロー母音読み
スピードを極限まで落とし、1拍に1文字のペースで「母音の形が崩れていないか」「舌の奥に力が入っていないか」を自己点検します。例えば「菊栗菊栗三菊栗」なら、「い・う・う・い・い・う・う・い・あ・ん・い・う・う・い」と母音だけで発声し、口の開きを均一に保つ訓練を挟むと、子音を乗せた際の明瞭度が飛躍的に向上します。
ステップ3:スマートフォンの録音機能によるセルフフィードバック
自分の耳で聞く「骨導音」と、他者が聞く「気導音」には大きな隔たりがあります。必ずスマホのボイスメモで録音し、「サ行が擦れていないか」「タ行がチャ行に化けていないか」「語尾の母音が落ちていないか」を客観的にチェックする習慣をつけます。
一般に知られていない盲点とネットの誤解|「早口=上手い」の危険性
ネット上の動画やSNSでは、「外郎売を何分何秒で言えるか」というスピードチャレンジが人気を博していますが、表現・アナウンスの現場視点では大きな誤解が含まれています。
外郎売の本質は「大道商人による薬の実演販売(プレゼンテーション)」です。 目の前の聴衆を引き込み、足を止めさせ、財布を開かせるための説得力、抑揚、間の取り方こそが命です。早口であっても言葉の一つひとつが観客の脳裏に情景として届かなければ、それは単なる「筋肉の運動」に過ぎません。
また、「毎日何十回も連続で唱える」という過度な負荷も禁物です。喉や声帯周辺の筋肉に力みが生じた状態で無理に発声を続けると、声帯結節や慢性的な喉の痛みを引き起こすリスクがあります。1回1回を丁寧に行い、1日10〜15分程度の集中トレーニングに留めるのが最も効果的です。
【プロの結論】効果が出る人・慎重になるべき人の判断基準
【劇的な効果を実感できる人】
- 滑舌が甘く、相手から「え?何て言った?」と聞き返されることが多い人
- 人前で話す際に息が上がり、後半で声がかすれてしまう人
- 声優・俳優・アナウンサーを目指し、基礎体力としての調音技術を磨きたい人
- 営業やプレゼンで、言葉にメリハリと説得力を持たせたいビジネスパーソン
【練習アプローチに慎重になるべき人】
- 顎関節症の気があり、大きな口の開閉で顎に痛みや異音が走る人(※無理に開けず、小さなフォームから開始する)
- 喉に炎症や違和感がある人(※完全休養を優先し、回復後に再開する)
- 「とにかく早く言えること」だけを目的に設定してしまう人

【外郎 売 全文】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:初心者はまず暗記してから練習すべきですか?それとも見ながらでいいですか?
A1:最初は絶対にテキストを見ながら練習してください。暗記を優先すると、うろ覚えの箇所で舌がもつれたり、誤った発音のまま記憶してしまうリスクがあります。テキストを目で追いながら、正確な口形と発声でスムーズに言えるようになった結果として、自然に暗記できている状態がベストです。
Q2:『外郎売』の中で最も多くの人がつまずく難所はどこですか?
A2:最も脱落者が多いのは「お茶立ちょ茶立ちょちゃっと立ちょ茶立ちょ、青竹茶筅でお茶ちゃっと立ちゃ」のチャ行連続と、「武具馬具武具馬具三武具馬具、合わせて武具馬具六武具馬具」のバ行・ガ行の連続打鍵です。ここは舌先と唇の分離が求められるため、最初は極端にゆっくり区切って練習するのがコツです。
Q3:1日何回くらい練習すれば滑舌の改善を実感できますか?
A3:回数よりも頻度と質が重要です。1日1〜2回、最初から最後まで集中して録音を聴き直すルーティンを毎日継続すれば、およそ2〜3週間で口周りの筋肉の動きが軽くなり、日常会話での言葉の明瞭さや通りやすさに明らかな変化が現れます。
まとめ:伝わる声と滑舌を手に入れるための実践ガイド
歌舞伎十八番『外郎売』は、江戸の昔から役者の芸を磨き、現代では声のプロフェッショナルの基礎を支え続けてきた至高のトレーニングツールです。そこには日本語の音の美しさと、人の心を惹きつける語りのダイナミズムがすべて詰まっています。
単なるスピード競争に惑わされることなく、正確なふりがなと意味を理解した上で、一音一音を丁寧に響かせる意識を持つこと。その積み重ねこそが、あらゆる場面で相手の心にしっかりと届く、力強く美しい声を手に入れる唯一の確実な道です。 (出典: 外郎 売 全文(Yahoo!ニュース))